第6回 「大矢雅章さんのアトリエ」 三澤ふみ

あいにくの雨となってしまった11月の土曜日、新宿からおよそ1時間のところにある、版画家、大矢雅章さんのアトリエを訪問した。アトリエは母屋の外にあるが、その整然としている様子にまず驚く。多忙な大矢さんが忙しいスケジュールの中で制作するのに、時間のロスが発生しないように考えてとのことである。日頃散らかし放題の自分のアトリエに反省。
銅版画の技法を体験させていただきながら、版画の道具もたくさん見せてもらった。そのほとんどが自分に合わせ、使いやすく設計したものである。
作家の繊細な配慮がすばらしい作品を生んでいることに改めて感激した。
強い意志で自分の作品について語る大矢さんのお話はとても分かりやすく楽しいものであった。日本でまだ歴史の浅い技法のこれからの可能性、そもそも銅版画はどうして始まったのか、なぜ海外に出品するのか、それは世界の中で自分の作品が通用するのかを確認するためであるなど興味深いお話がたくさんあり、中身がとても濃い時間であった。
大矢さんは最近 国際的な版画展に出品し台北や、韓国、タイ、スペインなどで数々の受賞をしており、来年はスペインで受賞展があるという。
お昼には自家製の野菜をふんだんに使ったお母さんの手料理で温かいおもてなしを受けた。屈託なく笑うお父さんときめ細やかな母さん。帰り際に陶芸家でもあるお父さんのアトリエも見せてもらった。
天気には恵まれなかったが、アートに直接触れられ、日頃得がたい体験ができとてもいい1日であった。

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