第7回 「薗部雄作さんのアトリエ」 住谷重光

溝ノロ駅から至近距離のマンションの七階に先生の住居・アトリエはある。落ち着きのあしっかりした建物の中庭は雑木林のような風情だ。
窓からの眺望をながめつつ、お茶をいただく。奥様の遺影がやさしく微笑む。廊下、居間、各部屋と、いたる所に絵が置かれ、まるでトトロのネコバスに乗っている様な伸縮自在な空間にいる気分になってくる。 午前中は執筆、午後に制作が先生の日課だ。
アトリエは狭く細長い部屋で左右の全壁面は天井まで書棚になっており、そのまわりにも、CDや本などが無造作に置かれて在る。
窓に面した机が先生の制作場所で、座ると何か密度の高い緊張感が悪い、机の一角が広い海原の様に感じられる。
20歳前後の初期の風景画、抽象画も見せて頂く。新鮮な感じとその完成度の高さに駕きながらも、先生の資質であるデイテールに対する配慮とそれを構築してゆく方法など、現在の、格子状に構築された宇宙を感じさせる小さな作品にも通じる一貫した姿勢に頭が下がる思いがした。
我をはらず、おだやかで自然体の先生だが、己に対する厳しい批評精神と、制作に対する激しい熱情がなければ、あれほどのカオスの状態から次々と展開される質の高い作品を生み出すことは不可能ではなかろうか。
「時流にまどわされず、無理をせず、自分に出来ることは何かをみつめ、やり続けることで、誰にでもかなりの創作活動が出来ます。」 と、きっぱりとした先生の言葉が印象的だった。

>>> 一覧に戻る