第9回 「長谷川学さんのアトリエ」 なかはらみほこ

三浦半島の漁港の町、三崎口に長谷川さんのアトリエがある。もと歯科医院として使っていたかなり古い家をアトリエにしている。海の見えるその家は、当時の診察の部屋や道具、家具などがほぼそのまま、当時の空気までも残されている。そこに長谷川さんの作品、「黒い城」、「象と歯」、冠を被った頭蓋骨などが飾られていて、それらが年月を経た歯科医院の空気と妙に溶け合って、不思議な空間を作っているのである。壁に掛けられた「千義手観音」のデッサンは地雷廃絶キャンペーンのための現在計画中のものだそうだ。千手観音の手のかわりに現地で集めた義足を使おうという意欲的な構想の話を伺った。
それから、頭蓋骨の絵に「すどう美術館」の文字入り木版作品の刷り方の実習をさせてもらったのはとても楽しく面白かった。同じように刷っても微妙に出来上がったものが異なるのはやはり参加者の個性の違いか。
漁港で買ったお刺身や三浦大根などお野菜をさっと料理して長谷川さんの炊いた玄米と一緒にいただきながら、話は弾む。
最後に、マイペースで自分を曲げず、大きなことを成し遂げていくだろう長谷川さんの若い力を応援したい。

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