第13回 「林美喜さんのアトリエ」 長岡美智子

丘の上の閑静な住宅街。『ふる―い家』を改装中と聞いていたのに、到着した家は「どこが古いの?」といいたくなるほどきれいな家だった。
玄関に入るとご自分達で張り替えたという葉っぱ模様の壁が広がり、また、家中の壁は試し塗りを何度もしたという白やピンクやグリーンで障子は京和紙。
リビングには自作の立体作品やオブジェがさりげなく飾られ、日常生活にも使われている。鮮やかなピンクの『落ちていた気持ち』(オブジェ)は広い壁面に飾られ、リビングのアクセントになっている。いつのまにか『テーブル』と名の付いた作品にお茶がのる。
リビングに続く庭との間にはサンルームがあり、明るい日差しが注ぎ心地よい空間を演出している。ここは時には制作の場になるという。棚の中にはきちんと整理された工具がしまわれていた。ここで作品の話を伺ったり、生活の中でふと思いついた時に描いたというスケッチのファイルも見せていただいた。
二階にも案内された。アトリエとして使っているという六畳ほどの部屋には小さな糸鋸や見慣れない工具がいっぱい積まれ、ここであのような楽しい作品が生まれるのかという実感がわいた。作家の作品に対する思いが、完成された作品を見る時とはまた違ったかたちで伝わってくる。このアトリエの隣には和室や客間などがあり“制作の場”も“生活の場”の一部になっている。
美喜さんは『作品表現は暮らしの中で感じる事から引き出したり、切り取ったりすることが同属だと良いのではないか』という。それは買う側にとっても同じで、作品は暮らしの中でふと感じたことや、あるとき感じた気持ちを思い起こしたり、大切にしたりするもとになると思う。そういう気持ちで作品を手にするする人たちが増えていくのもいいな、と思う一日であった。

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