002 ひとつの別れ

すどう美術館は柱となる二人のスタッフ、それにボランティアの人たちや実習にきている学芸員の卵などに支えられ何とか運営ができているのであるが、このほどちょっと困ったことが起きた。
それはスタッフの一人、土井由美子さんが9月末で退職されるということである。理由は5月に結婚をされ、新年には赤ちゃんの誕生も予定されているためで、おめでたいことなのであるが、戦力ダウンは免れず美術館にとっては事件なのである。
土井さん(今は木村さんであるが)は、もう一人のスタッフ高橋玉恵さんとともに9月末でちょうど4年4か月美術館に尽くしてくれたことになる。 ギャラリーの仕事は外から見るときれいに見えるが、実は相当ハードである。日常は朝の雑事から始まり、来館者への応対、諸打ち合わせ、DMの発送などなどがあり、ほかにも企画展の立案推進や作品の販売活動、重労働である作品の掛け替え、梱包、照明、その他いろいろで時間的にも肉体的にもたいへんである。
そんな中で土井さんはいつも明るい笑顔で積極的に仕事に取組み、どんなに難しいことにも挑戦してたじろがない。仕事を単に仕事ととらえるのではなく、それを通して自分を向上させ、周りの人たちにも幸せを分けていくという姿勢がみんなに伝わったからであろう。多くのファンをもっていた所以である。
いくつかのプロジェクトの担当もしてもらったが、2003年7月に行った「アート アクト」展では館内の作品展示のほか、全国から真摯な美術活動を続けている七つのプロジェクトを選び招致して、二日間にわたっての討論会を行っている。そしてその進行も担当し、美術が当面している問題、活動を続けるうえでの課題や問題点、これからやっていくべきテーマなどを浮き彫りにした。この記録は一冊にまとめられ、各方面に配布、反響を呼んだものである。
また、本年5月、銀座の泰明小学校で行った十三画廊、百人のアーティストによる野外展でも事務局として力を発揮している。
私は土井さんが美術館に残してくれたこれらの足跡はきちんと評価しておきたいと思うのである。
それにしても合気道で知り合った、木村一騎さんとの結婚披露宴での土井さんはどこまでも可愛く美しく、その姿が今でも強い印象として残っている。それに彼女のアイデアで式場と交渉し、当日、すどう美術館のアートが披露宴会場の壁いっぱい掛けられていたのも忘れられない。 幸せいっぱいな家庭を築いていくことを心から願っている。

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