007 絵の値段

絵の値段はどうやってつけるものであろうか、あるいは決まるものであろうか.人によって作品はまちまち、仕入れ価格という板念もないのでなかなか基準が難しい。
多くの場合、画家があたりを見回して自分でこのぐらいと決めたり、画廊がアドバイスして決めたりであろう。そしてどんどん売れていく一部の人の絵はどんどん高くなっていく‥ それにしても日本の場合バブルの時に象徴されたように一般的に欧米より値段が高い.しかし、絵が非日常的なものでなく、どこの家にも身近に掛けて心豊かになってほしいと思う私はできるだけ安い値投で買えることが望ましいと考えている。
それで私のギャラリーでは画家に「作品が気に入って、買ってもらえることが一番大事だと思うので、できれば買いやすい値段にしましょう」といっている。
中には「私は画家になるために美術の大学へ行くなど相当の投資をしてきた。絵具代、一日あたりの日当を考えても安くはできない」 と受け入れようとしない人もいる。時間をかけたり、絵具代がたくさんかかったからといって、価値があるといえないのが芸術の芸術たるゆえんなのにである。
もちろん、高い方が画家も幸せ、手数料をいただくギャラリーも幸せには違いないが絵が売れていかなければ何にもならないのではないか。
もっとも、まだまだ、自分の眼で好きな絵を選び、家具を買うように気軽に絵を買うという習慣が根づいていない日本では名が売れていて、高ければいい絵であると考えている人が多いのでかなりのギャップがあることもある。
現実に少し前の話になるが、お役所から某銀行に天下りした頭取が就任してすぐ、何号の作品かは知らないが号600万円するという有名作家の絵を購入しろと指示したという話を聞いている。本当にその画家の絵を認めているのではなく、功なり名を遂げた自分のステイタスを示すための行為であるように思えてならない。
また、昨年、当初1万円でオークションにかけようとした絵がゴッホの作品というお墨付きをもらつて三百万円に変更し出したところ、、結局6600万円で落札されたというニュースがあった。これなども価値は1万円で、あとの6599万円はゴッホの名義料と考えればいいのかもしれない。値段と価値が一致しない典型的な例である。
名前や値段でなく、安くてもいい絵をぜひ選んでほしいと思うのである。

>>> 一覧に戻る