013 いろ いきてる

もう八十歳をずっと過ぎているのに活躍している作家に元永定正さんがいる。今は解散してしまったが、関西で一世を風靡した前衛の「具体美術協会」の一員だった人で、うれしいことにニューヨークに滞在していたことがあり、私のコレクションの中心である菅創吉ともそこで僅かではあるが親交があったと聞いている。
元永さんは昨年、「損保ジャパン東郷青児美術館大賞」を受賞し、先ごろその受賞記念展が新宿の東郷青児美術館で行なわれた。
これまでも何回か作品を見ているが、先日この展覧会を見に行ってあらためて強い感動を覚えた。鮮やかな色を使い、おおらかで自由でなんの屈託もない感じの作品が50点ほど展示されており、久し振りに気持のよい絵に出合ったという思いがした。
子どもの絵本もずいぶん描いて出版されており、今回の受賞の対象になった作品も「いろ いきてる」という子どもたちに夢を与える美しい色と形の絵本なのである。
年をとると力がなくなり、枯れたといえば聞こえがいいが、魅力のなくなる作家が多いのに、この元永さんの瑞々しさは何であろう。本当は苦しいこともあったであろうが、今も若さを失わず、原色に近い色を使い、楽しみながら思うがままに絵を描いているからではないか。
肩肘張ってギリギリ描くことも必要かもしれないが、こんな風にふわふわとした、それでいて軸足をしっかり固めている作品が元永さん以外に、もっと世に出てくればいいなと思うことしきりであった。

>>> 一覧に戻る