026 すどう美術館での菅創吉展

 去る6月19日から7月1日まで、すどう美術館において「菅創吉展」(菅創吉1905―1982)を開催した。小田原に拠点を移し、ちょうど丸5年になること、そして何よりも菅創吉の作品に出会い「壷中」という作品を購入したのが今から30年前であり、それが美術館をはじめるきっかけになったわけで、私にとっては30年の記念展にもなったのである。
 作品は油彩、デッサン、オブジェ、立体の計30点余りを展示した。
 思いたって僅かな期間での準備で、美術館ニュースの「AQUA」27号でお知らせした程度であったが、幸い、朝日、読売の両新聞から取材があり、それぞれの新聞で紹介されたこと、また、地元の足柄新聞でも取り上げてくれたことなどから予想を超える大きな反響があった。
 初めて菅作品に接した人たちの多くが感動をしてくださり、長い時間作品の前から離れられないでいた。今からもう14年前、町田の自宅での「命のつぶやきが聞こえる-菅創吉展-」がNHKの日曜美術館で放映され、2000人を超す来館者があったときの情景が思い出された。
 作品の多くが40年前に作られているが、現代に通ずる新しさを持ち、独特のマチエールに加え、ユーモアやメルヘンもあって、見る人の胸のうちにスーと入っていったのではなかろうか。
 こんなエピソードもあった。川越市から訪れた方は過日、古本屋で本を見ていると後光の射している画集があり、それが菅創吉のものであったという。早速入手し、作家のことを調べているうち、すどう美術館で偶然にも菅創吉展開催中を知り、飛んできたとのことであった。実物と感激の対面をしてくれたのである。
 30年前、わけも分からず、どうしても欲しくなって買ってしまった菅作品、その菅作品がこんなに人の心の中に入り込んでいくことをあらためてうれしく思った。

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