多摩美術大学美術館での展覧会に寄せて

 平凡なサラリーマンで美術とはまったく別の世界にいた私が、たまたま妻と一緒に伊豆の池田20世紀美術館に立ち寄りました時に出会ったのが、菅創吉の作品です。46歳の時でした。
 最初は異質に見えた作品が、しばらく見ているうちに、心に響いてくるものがあり、妻とともに菅作品の魅力に取りつかれ、その場で1点、作品を購入してしまったのがすべての始まりです。
 それを機に、私たちふたりは菅作品を中心に名前や表面の美しさではなく、身体で感じ、心に沁みる作品をコツコツ集めるようになってしまいました。
 作品が集まってきたときに考えたのは、絵の役割は多くの人に見てもらうことではないかということと、絵から受ける感動を他の人にも伝えるべきではないかということでした。
 そこで、1990年10月、当時居住していた東京町田市の自宅を「すどう美術館」(通称;世界一小さい美術館)の名で開放し、コレクションの作品を見ていただくとともに、いろいろな活動をするようになりました。
 62歳で会社退職後は大決断をし、東京銀座に進出し、10年にわたり様々な活動をし、現在は小田原の地で活動の範囲を広げてきています。
 活動の基本理念はこれらの体験から「人間の精神的な面で、アートはなくてはならないもの」であり、それをお伝えしていきたいということにあります。
 このたび、多摩美術大学美術館で「すどう美術館」のコレクションと30年にわたる活動を評価いただき、展覧会「須藤一郎と世界一小さい美術館ものがたり」を開催いただくことになり、感激でいっぱいです。
 残念なのは二人三脚で一緒に活動してきた妻がこの1月、天国に召されてしまい、見せてあげられないことです。でも、きっとあの世から眺め、喜んでくれていることと思っています。
 多くの皆さまにもご覧いただければ私のこの上ない喜びです。

2020年10月 すどう美術館 館長 須藤一郎

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