アート未来展

すどう美術館 館長 須藤一郎

 アート未来展という団体展がある。正式には「国際公募アート未来展」で、本年は6月から7月にかけて国立新美術館で開催されたが、これが第22回目であり、著名な団体展と比べるとまだ新しい。
 特徴的なのは国内の作家だけでなく名前のとおり海外まで呼びかけ、まだ、アジアが多いが、多数の海外作家の作品も展示されていることである。それに加えて「未来コーナー」というスペースが設けられ、多くの小学生の作品も展示されていることにある。
 ご縁をいただき、私はこの展覧会の授賞式とそのあとのレセプションに毎年ご招待をいただいている。
 私はどちらかといえば従来の団体展には批判的である。それぞれに独特の匂いがあり、家元制度のような組織、その組織内だけでの争い、授賞基準の不明朗さなどが目につくからである。
 私がアート未来展のご招待をお受けするのは、この団体展には何の匂いもなく、作品全体が自由な空気に包まれていて気持ちがいいからであり、本年も喜んで出席させていただいた。事前に見た作品は全体的に前年よりよくなっていると感じられた。
 さて授賞式は内閣総理大臣賞をはじめとする大臣賞、東京都知事賞、都議会議長賞、アート未来大賞、準大賞などから新人賞、奨励賞等々があり、1時間を超す長時間である。面白いのは、ほかは賞状に賞金か賞品がつくのに、大臣賞や都知事賞などはやたら大きい賞状ばかりということである。
 さて、その授賞式の中で何人かの来賓者にまじり、私にも受賞者へのお祝いのあいさつをとのご指名をいただいた。
 私はひとりの作家の作品により人生を変えさせられ、考えもしなかった美術の世界に足を踏み入れたという自分の体験を話し、今日の受賞をきっかけとし、新しい気持ちで明日からの制作に取り掛かり、いい作品を作ってほしいとの期待を伝えた。
 そして私のいい作品の基準は、その作品をそばに掛け、あるいは置いて、一生一緒に暮らせるかであり、色でも形でもテクニックでもなくて、その背後の作家の生き方、美術に対する姿勢に共感が持てるかどうかであると付け加えた。関連して作家が人の目を気にして制作するのではなく、作家自身が作品であり、自分をどれだけ豊かな人間にするかが一番大事であるという私の持論を述べさせていただいた。
 終わってからのレセプションではおいしいフランス料理とワインをいただき、とても幸せであった。
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