021 木のバラード

エリザベス・ロブレスさんはフィリッピン人の女性アーテイストで現在つくば市に在住し、日本で活発な活動を続けている。
過去にはフィリッピン大学の美術学部で理論やデザイン学科の教授を務めた実績があり、アメリカでの展覧会経験も多数ある実力派である。
木彫の作品で、高さ二メートルにおよぶ大きな作品が多く、すどう美術館では銀座時代に個展を開催している。
そのロブレスさんが先般、県立つくば美術館の巨大なスペースで四度目になる個展を行なった。毎回すどう美術館が展示を頼まれる。副館長の展示が気に入られており、今回もまた、朝九時から一日がかりで手伝をした。
私は初日のオープニングに招待を受け、つくば美術館に行ってきたが、展覧会はとても感動的であった。
いつものように木彫の作品が主体であり、とぎすまされたような、一つ一つの作品の素晴らしさもさることながら、会場全体がひとつの作品になっていた。ロブレスさんの美術を愛し、命がけで作品に対峙している姿勢がそのまま表れていたのである。ちょっと自慢になるが、作品をきちんと理解している、副館長の展示の仕方も良かったのだと思う。
実は、ロブレスさんは百五十五センチに満たない小柄な身体で、年齢は五十五歳(らしい)、しかもこれまで十回もお腹の手術をしているそうであり、今も体調は万全でなく、最近、十五キロも痩せたということを聞いていて心配をしていたところである。
会場でのロブレスさんは、そんなことはおくびにも出さず、私にも「元気、元気」といって、ボランティアの音楽家たちの弦楽器の演奏にあわせ、力強い絵画制作をするというパフォーマンスまで行なった。
まわりに助ける人たちがたくさんいることも支えとなっているのであろうが、このアーティストの美術に向かう厳しさ、そして楽しんでいる様子を目の当りにして、私の心も満たされ、いろいろ考えさせられる一日であった。

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