AQUA 第44号 第3回「ARIO」実施のご報告

 第3回「西湘地区アーティスト・イン・レジデンス」(略称ARIO)は予定どおり、昨年11月に実施、海外5人、国内6人計11人のアーティストを小田原に招待し、作品の制作とともに、いろいろな体験をしていただきました。
 11月21日から28日までの尊徳記念館内での作品制作期間中には、制作の公開やコンサート、そして、アーティストの協力を得てのワークショップやシンポジウムなども行い市民との交流を果たすこともできました。
 11月29日、つつがなく修了式が終わり、それぞれが帰途に着きましたが、感激で涙を見せながら別れて行った海外のアーティストの姿が強く印象に残っています。
 このプロジェクトは多くの企業、数えきれない個人の方々からの協賛やご支援で成り立っており感謝の念でいっぱいであり、あらためてお礼を申しあげます。また、今回は神奈川県が小田原市とともに共催で参加、いろいろな面で県と市からご協力がありましたことをご報告したいと思います。
芸術の振興、アーティストの育成・支援、市民の美術との触れ合いなど「アーティスト・イン・レジデンス」の持つ意味の理解がさらに深まり、もっともっといろいろな場所で行なわれるようになればと今、私は願っています。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第43号 すどう美術館の最近の活動

 異常に暑かった今年の夏。すどう美術館はそれに負けず見応えのある展覧会が続けられたと思っています。
 7月末から2週間行った田中鉄人展、鋤柄大気展。どちらも二十代後半の若い作家で、これから大いに期待されます。
 田中鉄人は昨年の「若き画家からのメッセージ展」の受賞者です。それほど大きくない一つひとつの支持体に十一種類の鉛筆を使って4週間もかけて作り上げられた絵が十数点並べられました。鋤柄大気展は作家が京橋のギャラリーで行っていた展覧会の作品に魅力を感じてお声掛けをし、展示をしてもらったものです。太い麻縄を道具を使わず、手だけを使って作られた大きい立体の作品と小さい作品、十点ほどの展示でした。どちらも尽きない根気と、人に媚びない自分をしっかり持っていることが素晴らしいと思いました。
 8月は美術大学の大学院を修了し、まだ四年の俊英、田沼利規展でした。銅版画を中心に油彩やドローイングなど四十数点の展示で、いろいろな可能性を見せてくれました。展覧会を終えた感想を作家から寄稿をしていただきましたので、それをお読みいただければと思います。
 さて9月です。世界を駆け巡り展覧会を行っている作家、山口敏郎の展覧会。マドリッドに居を構え三十数年余になりますが、毎年夏にすどう美術館で展覧会をしていただいて、もう十五回を数えました。多くのファンがいますが、すどう美術館を通じてマドリッドに行きお世話になった作家も数知れずです。
 そして、9月のもう一人の展覧会は石田象童展。書から絵に移り、書の良さを残しながら、抽象の世界に踏み出してどのくらいになりますでしょうか。私の好きな作家です。
 9月の末からは四回目となる「三次元の蟻は垣根を超える」が始まります。
 寄木や木工、漆、鋳金など小田原の伝統工芸と現代アートのコラボ展。統一テーマを「のびゆく予感」としましたが、作家たちはお互いに切磋琢磨し、古い良さと新しい良さを表現の中で見せてくれると思います。
 最後になりますが、11月の「アーティスト・イン・レジデンス」については着実に準備を進めていますが、引き続き皆さまのご支援が必要です。どうぞよろしくお願いします。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第42号 第3回「アーティスト・イン・レジデンス」実施に向けて

 世界的な視野に立って、芸術の発展、アーティストの育成、支援、そして市民との交流などを図る目的で、これまで2回実施してきた「アーティスト・イン・レジデンス」は、市民やマスコミ、その他多くの方面から多大な評価をいただきましたが、このたび、その3回目を行うこととし、現在、いろいろな準備を進めています。
 具体的には、11月19日から12月1日の間、国内外から10~12名の作家を招待し、滞在場所や制作場所を提供、作品を制作していただき、その作品を何か所かの会場で展示します。
今回も小田原市の尊徳記念館を制作場所とし、作品の展示は前回と同様、市の清閑亭、すどう美術館他で行なうことを予定しており、制作期間中、公開制作やシンポジウム、コンサート、ワークショップなども行います。
 実施にあたっては私が「西湘地区アーティスト・イン・レジデンス実行委員会」の代表となって事業を推進いたしますが、今回は神奈川県からも実施についての要請があり、県および小田原市の協力のもとに行うものであります。
2020年のオリンピック、パラリンピックに向けてスポーツだけではなく、文化芸術についても盛り上げていくという国の方針があり、神奈川県からはその一環として「アーティスト・イン・レジデンス」をメインのテーマとして取り上げたいとの説明をうけています。
これを裏付けるように、先ほど中長期の文化行政の方針を定める「文化芸術の振興に関する基本的な方針」が閣議決定されており、オリンピック、パラリンピックに向け、「文化芸術立国」の実現を目指すとされています。その中で新規の重点戦略の一つとして「国内外の芸術家を積極的に地域に受け入れる取り組みへの支援」があります。
「アーティスト・イン・レジデンス」の活動は、まさにこの方針を先取りして行っている事業といえるのではないでしょうか。
ただ、このプロジェクトの成功のためには、引き続き、多くの皆さまのご支援、ご協賛が必要です。趣旨にご賛同いただき、いろいろな面でご協力をいただければと幸いと思います。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第41号 現代美術の展望(VOCA展)

 3月13日、上野の森美術館で開催された第22回VOCA展のシンポジウムとレセプションに出席してきました。
 VOCA展は私がかつて勤務していた第一生命の協賛で行われている展覧会で、毎年選考委員が決められ、その委員が推薦する40歳までの作家の作品が展示されるという、ユニークな方法が取られています。  絵画の登龍門であった安井賞展がなくなった今、それに代わる展覧会として評価されるようになっています。
当日のシンポジウムでは運営委員会の委員であり、また、受賞作品の選考委員でもある高階秀爾さん他5人が登壇し、受賞した作品の選考経過や平面と絵画との関係、現代美術の範囲などについてそれぞれの思いが伝えられました。
 一騎当千の委員たちなので、丁々発止のやり取りが面白かったのですが、22年関わっている委員と新しい女性2人の委員の主張の差も感じられました。
 今年の特徴は写真の出展者が多数出てきて、受賞者も2人いたということです。欧米のアートフェアではもうずい分前から写真の作品が普通に出品されており、日本でも漸く認知されてきたということでしょうか。
私は具象、抽象の区別でもなく、「現代の生活空間に合う絵をもって現代美術という」と勝手に定義していますが、写真もあるいは動画もそれに相応しい作品は現代美術の範疇に入れていいのだと思います。
なお、大賞のVOCA賞は珍しく版画作品でした。これも時代の流れかもしれません。
さて、その前後に、国立新美術館で行なわれている「ルーヴル美術館展」を見てきました。現代美術を中心に活動している私ですが、その昔、ルーヴル美術館を訪れたことが懐かしく、また再会できる絵もあるかと思ったからです。
幸い混雑はそれほどではなく、ゆっくり見ることができました。
そして、今の作家では描けない美しく重厚なマチエールにあらためて感慨を覚えると同時に、絵の背後に見られるその時代、時代の日常生活や風俗の歴史が興味深く感じられました。
現代美術とヨーロッパ美術の真髄、対象的な展覧会をふたつ体験できたのは幸せなことでした。 

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第40号 「AQUA」40号の記念号発刊

2015年の新年おめでとうございます。
あわせておめでたいことに、すどう美術館ニュース「AQUA」が創刊され、今回が40号記念になりました。
 銀座から小田原の富水に移転し、この1月で7年5か月ですので、ほぼ2か月に1回、発行していることになります。
 この間、多くの方に執筆いただいて、充実した紙面ができてきましたことを深く感謝したいと思います。また、毎回、AQUAのデザインを担当いただき素敵なニュースに仕上げていただいている徳澤姫代さんにはあらためて厚くお礼を申しあげます。
美術館の運営としては、あっという間の期間でしたが、その時々の記事に書かれておりますように、活動の幅が広がり、いろいろな活動ができたように思っています。
館内の展覧会に加え、「アーティスト・イン・レジデンス」2回の実施や「東日本げんきアートプロジェクト」立上げと岩手県大槌町他の現地へ行っての3回の活動などの他、小田原市の後押しによる「小田原ものづくり・デザイン・アート」への参加で地元工芸の作家とすどう美術館の作家とのコラボにより小田原の活性化にも一端の役割を果たすこともできました。
海外の関係ではドイツ、アメリカのアートフェアに計5回出展し、日本の作家のPRにも努めてきました。
本年も4回目となるドイツのマルティン・.ファウゼル展をはじめ国内外作家の展覧会や「日本おもちゃ会議」のメンバーによるおもちゃの展覧会とワークショップ(みて・あそんで・つくる)など魅力的な催しが予定されています。
これから「AQUA」50号に向けてさらに充実した活動ができればと決意を新たにしています。引続き皆さまのご支援、ご協力をお願いいたします。


すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第39号 「GAPPE」の活動と「小田原もあ」展

 お知らせしている「GAPPE」(東日本げんきアートプロジェクト)の三回目となる活動は十月十一日(土)から十三日(月 祝日)の三連休に今年も岩手県の大槌町で行われます。
 眺めの素晴らしい浪板海岸のホテルが「三陸花ホテルはまぎく」として復活しましたが、関係者の方々のご協力で、そのホテルの使用ができ、十八人の作家の五十点にのぼる作品の展覧会、ヴァイオリンとギターのコンサート、そしてワークショップが行われます。
 さらに今回は現地でいろいろな形で被災者のために活動している二つの施設(ベルガーディア鯨山 森の図書館と虎龍山 吉祥寺)の代表にご協力をいただき、この二ヵ所でもワークショップが行えることになりました。
 現地の皆さんに喜んでいただけると思っています。  本年はチャリティ展やチャリティコンサートでの売上、たくさんの方々からの協賛による基金のほか、クラウドファンディングというシステムを利用し、一般の方々にも働きかけをし応援をお願いしました。
多くの皆さまのお力でプロジェクトの活動が続けられることに感謝です。

 十一月は十一日(火)から二十三日(日)まで、すどう美術館で「小田原ものづくりデザインアート」(小田原もあ)の活動、『三次元の蟻は垣根を越える』の展覧会が開催されます。
 現代美術の作家と小田原で活動する工芸作家のコラボレーション展で「三次元の蟻…」のタイトルでは三回目となりますが、お互いに刺激し合い、新しいものに挑戦しようとする気持がますます強まり、楽しい展覧会になるものと期待が膨らんでいます。
 関係するお二人からこの展覧会に向けての文章もいただきました。
 大勢の皆さまにご覧いただければと思っています。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第38号 すどう美術館のこれからの活動

 8月19日から31日まで第17回目となる「若き画家たちからのメッセージ」展が始まります。今回は12名の若き作家を選ぶことができました。
 それぞれの作家が熱き思いを抱いていて、期待は大きく、そして、面接の後で制作していただき、初めてみる作品が展示されるので、とても楽しみです。
 先日、神奈川新聞社の県西総局長が来館され、ユニークな公募展と評価し、長時間取材をしてくださいました。展覧会が始まる前に記事をお書きくださるとのことです。
 「東日本げんきアートプロジェクト(ギャッペ)」の活動ですが、3回目となる本年は少し時期をずらし、10月に今年も岩手県大槌町で行う予定です。
 先ほどギャッペ代表の4名が改めて、現地に下見に行ってくださいました。その結果でメンバーの人たちと検討を行い、2か所または3か所の施設で展覧会、コンサート、ワークショップを行うことで、現在、詳細を詰めています。
 この基金については、チャリティ展、チャリティコンサートなどにご協力をいただくアーティストの皆さんのほか、いろいろな形で協賛くださる方々の支援によって行います。引続きご協力をお願いできればと思います。
 11月には小田原市の無尽蔵プロジェクトの一つである「ものづくりデザインアート」の活動として、今回また、当美術館において小田原で活動する工芸作家とすどう美術館が紹介する現代アートの作家とのコラボレーション展が開催されます。刺激的な展示が行われるものと期待が膨らみます。
 美術館内ではその他、興味深い展覧会が目白押しです。皆さまのご来館をお待ちしています。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第37号 若き画家たちからのメッセージ展

 すでに多くの方に知っていただいておりますように、すどう美術館では館内でのいろいろな展覧会のほか、地方のギャラリーや障害者の施設、それに小学校などに作品を持って行っての「出前美術館」、日本のアーティストを世界に紹介する海外「アートフェア-への参加」、海外、国内のアーティストを小田原に招待し、滞在中作品を制作していただく「アーティスト・イン・レジデンス」、そして東日本大震災の被災者の方々に少しでも心の安らぎを持っていただければとの考えから、現地にお伺いして展覧会やコンサートなどを行う「東日本げんきアートプロジェクト」などの活動をしています。
 そしてもう一つ、若いアーティストにささやかながら支援をしたいとの思いから実施している「若き画家たちからのメッセージ展」があります。
 公募展ですが、作品だけで選ぶのではなく、応募者全員に私が面接のうえ、出展を決めさせていただいています。作品だけが一人歩きするのではなく、展覧会をきっかけに、いろいろな人間関係ができていくことを望んでいるからで、面接では応募者から美術についての姿勢や考え方をお聞きし選ばせていただいています。
私は、作る人、見る人、そして私たち関わる人の中に作品があると思っています。
 今年のこの展覧会は8月18日から始まりますが、事前の面接の関係もあり、6月末日が締切りです。出展する作品は面接の後に制作していただくという、ちょっとユニークな制度としています。
別添の募集要項のとおり今回が17回目となりました。多くの方に応募いただければと思いますので、自薦、他薦、どうぞよろしくお願いします。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第36号 美術評論について

 先ほど美術評論家の日夏露彦さんが、開催中のドイツの作家、マルティン・フアゥゼル展を見にすどう美術館に足を運んでくださいました。
 日夏さんは骨のある評論家で、きれいごとで済ませず、真髄をずばりと突く文章を書いていて、「日本の美術・負の現在」ほか著書も多い方です。
 久しぶりにお会いし、いろいろ情報交換をさせていただきましたが、最近では日展の不祥事をとらえ、日夏さんは「不正の温床・日展、一〇六年前から-名誉とカネとコネに満ちた日展の腐敗の本質-」なる文章を発表しています。みな知っている、あるいは感づいていることなのに、なかなかはっきりとそれを取りあげにくい問題ですが、あえてそれに挑戦する勇気を持っています。
 評論家もアーティストと同じようにそれぞれ生活があり、それこそきれいごとだけでは生きていけませんが、でも、本質的なことを見失ってはいけないと思うのです。
 最近聞いた話です。ある画家が美術評論家の先生に個展の案内につける文章をお願いし、謝礼を十万円お支払したのだそうです。
 ところが後日、ほかの画家に書かれた文章が自分に書かれたものとほとんどそっくりだったので、その評論家に抗議しましたら、七万円返してきたという笑い話のような話なのです。三万円分はどうとらえるのでしょうか。
 持込みの作品で文章を書いたり、実物も見ず、写真だけで文章を書いたりも状況によって止むを得ないのかもしれませんが、自分で書きたいことを書く、あるいは足を運び、新しい有望な画家を見つけ世に出すといっただいじな仕事-もちろん、そういう評論家もいないわけではありませんが-をしてほしいと思います。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第35号 新しい年を迎えて

 二〇一三年も慌しく過ぎ去っていきました。しかし、すどう美術館にとってはこの一年も充実した年であったと思っています。
 館内の展覧会では前年の「若き画家たちからのメッセージ」展の受賞者三人の個展を行いましたが、それぞれが僅かな期間であったのに新しい展開があり、期待を裏切らない展覧会をしていただくことができました。
 その他の一つ一つの展覧会も来館者に高い評価をいただき、楽しんでいただけたと受け止めています。
 館外の活動では、柱となる、二つの大きなプロジェクトを実施することができました。昨年に続いての「東日本げんきアートプロジェクト」の活動で岩手県の大槌町へ行って来たことと、第2回目の「西湘地区アーティスト・イン・レジデンス」が実施できたことです。
 前者については画家や演奏家のアーティストや多くのボランティアの協力によるところが大きく、後者についてもたくさんの協賛者、協力者によって遂行できたことであり、あらためて感謝の意を表させていただきたいと思います。
 さて、本年もフレッシュな気持で美術の活動に取組んで行く決意です。
 新春はすどう美術館のコレクションを二回にわたり公開し「すどう美術館コレクション展」で幕あけします。また三回目となるドイツのマルティン・ファウゼル展をはじめ、館内では質の高い展覧会を続けていきます。 
 館外活動では引続き、「東日本げんきアートプロジェクト」の活動で岩手県大槌町にお伺いする予定でありますが、できれば他にもコレクションなどの作品を持っての出前美術館をしたいと考えています。小、中学校での展覧会や授業を行うこともぜひやりたいと思います。
 微力ながら、美術が人間にとってなくてはならないものということを知っていただくための活動を今年も地道に続けていく所存です。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第34号 第2回アーティスト イン レジデンスの実施

今秋、すどう美術館が事務局となり、海外から五名、国内から五名 計十名のアーティストを招待し、第2回目の「西湘地区アーティスト インレジデンス」を小田原で実施します。
 アーティスト イン レジデンスは海外では広く行なわれていますが、アーティストを招待し、宿泊や制作の場所を提供して一定期間、美術の作品を制作していただくプロジェクトです。
制作された作品は、その後展示し,多くの皆さんに見て楽しんでいただきます。
 芸術の振興、アーティストと市民の交流、アーティストの育成、支援などいろいろな意味を持っていますし、また、参加するアーティストは近くに箱根を控え、風光明媚で歴史と文化の街、小田原のよさを帰ってからPRしてくれますので、小田原が世界に知られることにつながります。
 一昨年の行なった最初のこの催しでは市民や多くのマスコミ関係その他で高い評価をいただきましたが、今回も小田原市の全面的な協力を得て、私が実行委員会の代表となり準備を進めており、前回を越える中身の濃いものにしたいと思っています。
 具体的には作品の制作を十月一七日から二四日まで、小田原市の尊徳記念館で行ない、できた作品は市の清閑亭(十月二四日~三一日)、すどう美術館(十一月二日~十日)ほかで展示して広く皆さんに鑑賞していただきます。
 なお、尊徳記念館ではその間、一般の方たちとの交流を図るため、制作公開、シンポジゥム、コンサート、前庭でのワークショップなども行います。

このプロジェクトを成功させるには多くの皆さんのいろいろな面でのご支援、ご協賛が必要です。どうぞよろしくお願いします。

すどう美術館 館長 須藤一郎

第2回「アーティスト・インレジデンス」協賛のお願い

標記のプロジェクト推進のため、下記のご支援をいただければ幸いです。
資金面以外でのご協力もよろしくお願いします。

  • ・個人協賛金  一口  5,000円(5,000円以下でも歓迎です)
  • ・企業団体協賛金 一口 50,000円

ご支援いただける方は下記の口座にお振込をお願いします。

  • ①みずほ銀行 小田原支店 普通口座 2898291
     口座名義 西湘地区アーティスト イン レジデンス  
  •         
  • ②さがみ信用金庫 富水支店 普通口座 0872410
     口座名義 西湘地区アーティスト イン レジデンス

AQUA 第33号 「東日本げんきアートプロジェクト」の活動

 東日本大震災の後、すどう美術館が事務局になり「東日本げんきアートプロジェクト」を立ち上げ、昨年、岩手の大槌、山田ふたつの町で展覧会やコンサート、ワークショップなどを行ない、現地の皆さんにたいへん喜ばれ、意義がありましたことについてはすでにご報告したとおりです。
 大震災より丸2年余を経過しましたが、被災者の方々の心はまだまだ癒されておりません。今年度も引続き支援活動を続けていくこととしています。
 必要資金については前回同様、画家の方々の作品提供によるチャリティ展、演奏家の方々によるチャリティコンサートの売上げのほか、いろいろな方のご協力によってです。
 4月には代表者数名が岩手の町に行き、その後の復興の状況や被災者の思いをあらためて知るとともに、今回はどんな活動が望ましいか、町当局とも打合せをしてまいりました。
 そして、すでに5月、6月にかけてすどう美術館と東京のギャラリィ無有斎で画家から提供いただいた作品によるチャリティ展を、また、無有斎ではその間2回にわたりチャリティコンサートを開催することができました。
本年は検討の結果、7月4日から8日までの間、大槌町において16人の画家の60点にのぼる展覧会、5人の演奏家による4日間のコンサートのほか、いろいろな楽しいワークショップを行なう予定です。  現地の皆さんには今年もきっと喜んでいただけると思っています。
 なお、最後になりますが、このプロジェクトでは皆さんにご協力をいただくため支援金のお振込口座も開設しています。どうぞよろしくお願いします。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第31号 第二回アーティスト イン レジデンス実施に向けて

 すどう美術館では一昨年、小田原市や多くの企業、団体、個人の方々のご支援をいただき「西湘地区アーティスト イン レジデンス」を実施し、市民やマスコミ関係その他多くの方々から多大な評価をいただきました。会期中の公開制作、招待作家の協力を得て行なった小田原城内や小学校三校でのワークショップなどもとても喜ばれ、一般の人たちとの交流がはかられたのもよかったと思っています。
 もちろん、招待した十二日間にわたり作品を制作した国内外十二人の芸術家たちもたいへん喜び満足して帰られ、今ではいろいろな形でつながりを持ち、刺激しあって制作を続けております。
 文化の向上、芸術家の育成、支援そして芸術家と一般の人との交流などの必要性を強く認識し、日本でも本格的な「アーティスト イン レジデンス」を実施したいとの思いで始めたことであり、一回で終わりにするのではなく、継続実施することが当初からの目的でありました。
 そのため、最初の経験をもとに、現在、第二回目の「アーティスト イン レジデンス」実施について準備を進めています。
 時期は今秋十月頃を予定しており、あらためて、宿泊場所、制作場所、作品の展示場所などの確保にあたっているところです。
 招待アーティストは前回と同じように海外、国内から十二名程度を考えておりますが、すでに海外からは実施の時はぜひ参加させてほしいとの自薦、他薦の申し出でが来ております。
 最後に、今回またこのプロジェクトを成功させるためには、多くの皆さまのご支援、ご協賛がどうしても必要です。趣旨にご賛同いただき引続き、いろいろな面でご支援をいただければと思います。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第30号 新春を開く

 新年は毎年「新春をひらく」展で始まる。その開くに相応しいテーマを決め、皆さんに作品を作っていただ展示するのであり、これまで「箱」「扉」「扇」などをテーマにしてきており、昨年のお正月は、大震災の後でもあり「心」がテーマであった。
 本年については何にするか、知恵をしぼった結果、「PAGE(頁)」と決め、皆さんに参加をお願いしたのであるが、例年のように70名を越す方が出展してくれることになった。
 それぞれが、未来に向けてどんな頁を開いていただけるのか、とても楽しみである。
 初日(1月6日)には出展者やご来館いただける方と新年会の開催を予定しており、賑やかな会になればうれしいと思っている。
 また、新春展の二弾目は「すどう美術館コレクション」展である。コレクションを本格的に見ていただく機会がなかなかないので、1月26日(土)から2月16日(土)まで少し長めに期間を取り、途中、一部掛け替えもし、全体で60点ほど見ていただく予定である。
 コレクションの原点となった菅創吉を始めいろいろな作家の作品であるが、その一点一点を「真剣勝負の衝動買い」で購入したものであり、私にとってはそれぞれにドラマがあり、思い入れがある。
 しかし、作家が自分の個展を行う時、人がどんな風に見てくれるのか、針の筵に座るような気持ちであると聞くが、自分が選んだ作品を他の人がどう評価してくれるのか、会期中、今度は私が針の筵に座ることになるのである。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第29号 すどう美術館の秋二つ

 すどう美術館ではいつも楽しく心を豊にする展示ができればと考え開催していますが、10月からの展覧会のうち特に興味深い展覧会をご紹介したいと思います。
 その一つは10月18日(木)から27日(土)まで行なわれる「三次元の蟻は垣根を越える」です。少し解説が必要ですが、小田原市無尽蔵プロジェクトの一つである「ものづくりデザインアート」の試みで、今回は小田原で活動している工芸作家とすどう美術館が紹介する現代アート作家とのコラボレーション展です。
 工芸の作品と現代アートの作品との間に垣根があり、それを超えられるのかとの問題提起でありましたが、もともと美に対する基本的な考え方には変わりなく、その原点に立ち戻り、お互いに刺激しあって、より良い作品を作っていければということで、垣根を越える三次元の蟻とは私たちのことです。
 すでに両者の打ち合わせを重ね、交流も進んでおり、それぞれを意識した面白い展覧会になりそうで、ワクワクしています。
 もう一つ。10月30日(火)から11月11日(日)までの浅野修展と浅野さんが主宰する食文化に関わる大きなプロジェクトへの協力です。
 北海道の帯広に近いめむろにJAの巨大な赤レンガ倉庫があります。帯広出身の浅野さんはその倉庫の中にこれまた巨大なジャガイモアートを作るのですが、その中に日本だけでなく、世界各国から生きて行くうえで、一番大事な食べ物についての小作品を作ったいただき、できた作品をこのジャガイモアートや倉庫の壁面に展示していくのです。最終目標は100万点。
 浅野展会期中にこのプロジュクトに関するトークやワークショップを行います。かまぼこ板や木切れ、ダンボールなどで作品を作っていただくよう、画材は用意しています。どなたでも参加自由です。
 作られた作品はすどう美術館で展示し、その後、めむろの倉庫に送られますが、その大きい赤レンガの展示室の一角にすどう美術館のコーナーが作られ永久に展示されることになります。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第28号 芸術と行政

 先ほど産経新聞社(大阪本社)編集部の大谷記者から突然電話による取材を受けた。内容はイタリア南部の近郷、カソリアの町で政府の「文化切り捨て」に対する過激な抗議活動が行なわれ、所蔵作品を一点ずつ燃やしている。それについてどう思うかということであった。
 実はもうだいぶ前、二〇〇五年に今は館長になっているマンフレディさんから、このカソリアで現代美術館を作るので、協力願いたいとの要請があり、日本から私の関係の画家五人を推薦し、作品を寄贈した。また彫刻家一人を現地に送り、三週間制作して作った作品も寄贈してきている。そのことを知っての取材であったらしい。
 当時の話では世界で活躍する現代美術の作家から作品を提供してもらい、それを収蔵し展示する美術館を作るというユニークな発想であり、多くの新設美術館が高いお金をかけ、ピカソだ、ゴッホだと物故の有名な画家の、それも二流に近い作品を集めているのに比べ、ずっと意義のある美術館になると感心していたものである。
 寄贈後、二十八カ国百人のアーティストと関わったキュレーターに招待状が届き、私も招待を受け、三人の画家夫婦たちとカソリアに行き、収蔵された作品を美術館で見、そこでのオープニングパーティに参加したり、ナポリの町の見学などさせてもらっている。
 そして、その後も何回か、このような形で収蔵を重ねていると聞いていた。
 さすが、文化の進んだ国、そして町だと思っていたのに今回の話に「イタリアお前もか」と衝撃を受けた。
 もちろん、「芸術は永遠」などではなく、人間に寿命があるように、美術品であっても、思いがけない事故で燃えてしまったり、朽ちてしまうことがあると私は思っている。
 しかし、画家が命を削って制作した作品を事情はともあれ、人為的に燃やすというのは承服しがたいことであり、何かほかの抵抗手段があるのではないか。行政はどんなに財政が厳しい折であっても、もっと芸術の大事さと真剣に取り組むべきではないか、何とかうまい解決がされて欲しいと、そんな感想を伝えた。
 大谷記者の話では大阪市の橋下市長が文化事業の削減、全面見直し打ち出していることの危機感を持っての取材であったようである。だが、大阪だけでなく、日本はどこの公共団体の美術館でも、今は予算が無く、美術館でありながら、必要な作品の購入もできず、善意の寄贈に頼っているというお粗末な現状であり、私はそのことを憂えているのである。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第27号 山田町と大槌町に すどう美術館がやってきた!

 すどう美術館が事務局となって立ち上げた「東日本げんきアートプロジェクト」が、標記のタイトルで四月二十七日(金)から五月四日(金)まで、岩手県の大槌町と山田町に行ってきました。
 昨年の大震災で大きな被害のあった二つの町の皆さんに、元気や心の安らぎを届けたいとの思いで、「未来へ・げんきアート」展と「人間賛歌・菅創吉」展の二つの展覧会、バイオリンとギターのコンサートそして、美術や音楽のワークショップなどを行なってきたのです。私も「絵は心のごはん」というテーマでギャラリートークを行いました。
 現地へは「未来へ・げんきアート」に出展した十五人、コンサートの二人に加えボランティアの人など二十人を超す人たちの参加がありました。
 大槌の町も山田の町も、まだまだ復興には時間がかかりそうですし、被災者の方たちも不安定な気持ちが続いている状況ですが、それぞれの町の皆さんが、美術や音楽によるこのようなイベントは初めてと言ってたいへん歓迎してくれました。
 絵を見て涙を流す人、コンサートを聞きながら涙を拭く人など多く、心の傷の深さを感じさせられるのですが、このイベントを通して少しなりとも気を紛らわすことができ、役に立ったのではないかと感じられ、うれしく、また、ホットしています。出展した作家たちや演奏家の熱意が現地の皆さんに届いたのだと思います。
 宿泊場所は長崎のカリタス協会が大槌に唯一形だけ残ったビジネスホテルを改装し、九州を中心とするボランティアのための施設でした。神父さんが、私たちのプロジェクトの内容をよく理解し、宿泊を認めてくれたのですが、合宿のような生活の中で、そこで一緒になった他のボランティアの人たちとの付き合いもとても楽しく有意義でした。
今回はチャリティ展やチャリティコンサートによる協力、その他多くのグループや個人の方々の支援により、資金を集めることができ、実現できましたが、できるだけ継続していければと思っています。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第26号 すどう美術館の活動

 すどう美術館では館内での展覧会を継続して開催しており、質の高い作品の展示を目ざしていますが、あわせて次のような企画を進めています。
 公募で行なう「若き画家たちからのメッセージ展」は今回で十五回目となりますが、本年は七月七日(土)から二十二日(日)までの日程で開催の予定であり、現在募集中です。要項は別掲のとおりで、多くの若き作家が応募されることを期待しております。適任の作家がおりましたら、ぜひ、ご推薦いただきたいと思います。
 昨年の東日本大震災で被災された人たちの心に、芸術活動をとおして生きる勇気と希望を届けたいとの目的で立ち上げた「東日本げんきアートプロジェクト」の活動は被害の大きかった岩手の山田町、大槌町に焦点を置き、昨年夏に現地に行き、実情の視察と両町の行政担当者との打ち合わせを行なったことはお知らせしたとおりです。その後、二つの町にボランティアの人たちでカバーを作り、それを添えて湯たんぽを五十個ずつお送りしたり、大槌町に子ども向けの本や絵本を皆さんから三百冊提供をいただき、お送りしたりの活動を続けています。
 このたび、両町と日程を調整し、四月二十七日から五月四日まで、最初に山田町、次いで大槌町で展覧会、ワークショップ、コンサートを行うことが決まりました。具体的な準備を進めるために、二月、副館長が大槌町で被災された松井カヨさんとともにあらためて実施する会場の確認と打ち合わせのために、両町を訪問してきております。状況についてはまたお知らせします。
 また、昨年秋に行なった「西湘地区アーティスト イン レジデンス」で国内外十二名のアーティストによって作られた作品については、小田原の清閑亭、南足柄市の文化会館、そしてすどう美術館に巡回展示をしてきましたが、その節ご協賛いただいた箱根湯本の天山湯治郷からご希望があり、湯治郷内のギャラリーでも展示を行なうことになりました。
 なお、次回のアーティスト イン レジデンスについては来年春から秋の間に行なうこととし、関係者のご意見もお聞きしながら、より良いレジデンスになるよう検討を続けています。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第25号 アーティスト イン レジデンスを終わって

 慌しかった十一月が過ぎました。十一月七日夕刻より、小田原市の加藤市長にご臨席をいただき、すどう美術館でオープニングのセレモニーを開催して始まった「西湘地区アーティスト イン レジデンス」は、十八日に小田原市の市民会館でアーティストに修了証書を授与し、修了パーティでつつがなく終了しました。
 日本のアーティスト六名、それにアメリカ、イタリア、スペイン、オーストリア(二名)、スロベニアからの海外六名のアーティストを迎えて行なったこのレジデンスは、予想を大きく上回るたいへんハードなプロジェクトでしたが、日本ではなかなか経験のできない、とても有意義なものであったと思っています。
 資金集めを始め、宿泊場所、食事場所、制作場所、そのあとの展示場所を探し、決定していく作業、期間中のスケジュールの設定などもろもろの準備を一つ一つ進めて開催の日を待ちました。
 大震災や原発問題を抱える不安な日本に予定どおり海外の六名が小田原に無事に着き、制作の期間は十二名のアーティストが仲良く、一体となって行動をし、それぞれが個性のある作品を作ってくれたのは本当にうれしいことでした。
 そして何よりも、感動し、感激したのは小田原市を中心に近隣の二市八町の協力はもとより、いろいろな企業や団体、個人の方、そして、多くの献身的なボランティアの人たちの協力でした。期間中ずっとアーティストに付き添ってお世話いただいた人、温泉や夕食を招待してくださった人、車での送迎を手伝ってくださった人、日本の古布でマフラーや巾着袋のお土産を作ってくださった人などなどとても筆舌に尽くしません。
 制作場所はお城の常盤木門と郷土文化館に分かれ、期間中、午後二時~五時を公開制作としましたが、市民も観光客も、そして若い人も年配の人も、そういう場面に今まで出会ったことがなく、衝撃的でしたと喜んでくれたことはおどろきでした。
 合計で千人ぐらいの方が立ち寄ってくれました。
 また、アーティストに分担いただき、お城の広場と小田原、南足柄の小学校三校で行なったワークショップは画期的なことだったと思います。参加した人たちの喜び、特に小学校では、子どもたちの目の輝き、楽しみ方など、一生忘れられないできごとになったのではないでしょうか。
 なお、海外六名のアーティストの皆さんが、日本の人たちの親切やもてなしのこころ、小田原とその周辺の風景や建物などに心から感激して帰ってくれたことが何よりもうれしいことでした。

 「レジデンス」が終わった後は、小田原の数寄屋造りの清閑亭で作品を展示しました。そこには三百人を超す人が見に来てくれ、和風の建物と現代美術の新しい試みでしたが、とても面白かったと評価をいただきました。
終了後は南足柄市の文化会館への巡回です。ここでは南足柄小学校で行なったワークショップの六メートル×四・五メートルの巨大な作品を四クラス分四点の展示もし、圧巻でした。早速、参加した六年生がクラスごとに鑑賞にきてくれました。
 文化の向上、アーテイストの支援、市民との交流等を目指して、日本でも本格的なアーティスト イン レジデンスを行なうべきとの使命感から始めたことでしたが、NHK、フジテレビ、朝日新聞、その他地元のマスコミにも取り上げられ、多くの方々の共感をいただきました。問題点、改善点は多々ありますが、これからも継続して開催していくことに意義があると考えています。
 すどう美術館はそれに向けての新たな出発が始まっています。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第24号 東日本げんきアートプロジェクト(被災地実情調査および行政との打ち合わせ)

 八月十五日(月)から十八日(木)まで岩手県の山田町、大槌町を中心に三月十一日の大震災の被災地に行ってきました。
 プロジェクトの「被災地で美術作品の展示やワークショップ、演奏家のコンサートなどを行ない、芸術を通じて被災された人たちの心に、生きる勇気と希望をお届けする」活動を実行するための、事前の調査と被災地の行政側の対応などを確認するのが目的です。
 岩手県を選んだのは大槌町や山田町の被害が大きかったこと、関係者が被災者になっていたことなどで、とに角そこへ行って見ることにしたのです。
 同行者は四人のプロジェクトメンバーでしたが、他に現地で「NPO法人復興岩手大槌町」理事長就任予定の松井憲一さんと合流、被災地の現状についてのご説明をいただくとともに、案内役も引き受けていただきました。
震災後五か月経ったのに、特に大槌ではまだまだ瓦礫の山でしたし、山田のほか、足を伸ばして見た釜石、宮古の街もそれぞれ差はあるにしても、被災の大きな爪あとが残っていて、テレビ等で見ているのと違う衝撃を受けました。
 行政の方とお会いしたのは山田町と大槌町でしたが、いずれも生涯学習課が文化関係の担当で、前者は小成勝也社会教育主事、後者は佐々木健課長ガ応対してくれました。
 いずれも被災地での美術や音楽等による支援について、その必要性を痛感されており、ぜひお願いしたい、「ウエルカム」ということで、正式な提案書の提出を依頼されました。時期については現地の状況から来年四月ごろになりそうです。
 大槌では他に、町議会の議員さん、ボランティア活動をされている方、被災者の方、被災を免れた方などにもお会いし、災害の状況や復興への思いなどもお聞きすることができました。持っていった慰問の品も関係者を通じ幼稚園や保育園の子どもに渡すことができました。
 今回の訪問は、被災地の実情がいろいろわかり、これからの活動を行なううえで大きな意味があったと思っています。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第23号 プロジェクト二つの進行

 すでにご報告しておりますが、すどう美術館では現在、二つのプロジェクトが進行しています。
 その一つ、「西湘地区アーティスト・イン・レジデンス」は海外、国内計十二名のアーティストを招待し小田原地区に宿泊場所、制作場所を提供して、作品の制作をしていただくプロジェクトですが、それぞれの場所が固まり、日程も十一月七日から十八日までと決まりました。制作された作品はその後、小田原市や南足柄市などの施設に展示しますが、その施設も決定しました。
 すでに海外、国内のアーティストの募集を始めており、八月末までには選考を終わり招待状を発送する予定です。
 これからはボランティアスタッフの募集、仕事の分担打ち合わせを初め、必要備品や画材の調達、その他もろもろなソフト面での準備を進めていきます。
 もう一つは三月十一日、東日本大震災で被災された人々の心に、芸術活動をとおして生きる勇気と希望を届けていくことを目的とするプロジェクトです。
名称を「東日本げんきアートプロジェクト」としました。
 実際に被災地に行き、美術作品の展示やワークショップ、音楽演奏など芸術を通して交流し、少しでも心のやすらぎを感じていただければと思います。
 そのための基金についてはアーティストや演奏家の協力を得て、すどう美術館およびギャラリー無有斎(東京都江東区)などで行なうチャリティ展、チャリティコンサートの収益をもととします。すでに、コンサート二回、展覧会を一回行ないましたが、これからも継続して実施します。
 被災地での場所や実施時期は各被災地の実情について情報を集め、最適と思われる場所、時期を決めて行なうこととしており、できれば長く続けていきたいと考えています。

すどう美術館 館長 須藤一郎

AQUA 第22号 東日本大震災と芸術

 3月11日に東北を中心に起こった大地震と津波、それに伴う福島の原子力発電所の事故は想像を絶する大きな災害となりました。被災者の方々に心からのお見舞いを申しあげるばかりです。
 このような時に美術どころではないという声もありますし、被災地から離れたアーティストの中にも、今、作品なんか作っていていいのだろうかと悩む人もいます。
 確かに未曾有の災害を受けている日本にあって、それぞれが何をなすべきかを考え、行動をすることは大事であり、現に国内外を問わず、支援金や支援物資を拠出したり、ボランティアとして現地に向かう多くの方がいて、人間の心のやさしさに感動を覚えています。  被災者の人たちの悲しみや苦しみは逃れようがないと思います。しかし生きる勇気や人間の可能性の素晴らしさを信じて頑張って欲しいと思います。そこに芸術が大切な役目を果たせるのではないでしょうか。
 先日、ギャラリィ無有斎でコンサートを行いました。若い音楽家たちによる弦楽四重奏はとても好評でした。終了後メンバーの一人大鹿由希さんから、出演者四人の総意として出演料を地震の被災者のために使いたいとの相談を受けました。芸術活動を通して被災者の方々を少しでもなぐさめることができないかとのことでした。ちょうどすどう美術館が考えていることと近いことであり、どんなことができるか、皆で考えていくことにしました。今回の収益はその基金となります。
 アーティストの協力を得て、6月にすどう美術館で、8月に無有斎でチャリティ展を行ないます。その後もコンサートやチャリティ展を続け、基金を増やしていくことになりました。
 なお、今秋開催予定の「西湘地区アーティスト・イン・レジデンス」の準備も進んでいます。海外のアーティスト達が安心して日本に来られるよう、この難局を、日本国民一人一人知恵と勇気を今こそ出さなくてはならないと思います。

すどう美術館 館長 須藤一郎